◾️三島弥彦!日本人初のオリンピック選手は東大生◾️
2019年大河ドラマが『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』では、主人公の一人として、金栗四三が登場します。
→金栗四三の経歴プロフィール!
金栗は日本人初のオリンピック選手としてストックホルムオリンピックに出場したことなどで有名ですが、
金栗と共にもう一人出場していた選手についてはあまり知られていません。
しかも、その選手は現役の東大生だったというから驚きです!
その人の名は、三島弥彦(みしま やひこ)さん。
この人もドラマの主人公になれそうなくらい、すごい人物なんです。
警視総監の三島通庸(みしま みちつね)の息子として生まれた三島弥彦さんは、
学習院大学を卒業した後、さらに東京帝国大学(現・東京大学)法科に進学します。
勉強ができたのは言うまでもありませんが、
スポーツも万能で、成人男性の平均身長が155cm前後だった時代に170cmを超える長身。
学習院時代には野球部でエース兼主将、ボート部でもレギュラーでした。
東大時代にはスキー術を修め、その他に柔道は二段、乗馬もでき、相撲も強くて、スケートも大会に出場する程に上手いなど、万能すぎる人物でした。
きっと人気もあったんでしょうね。
実際、雑誌『冒険世界』で行われた「痛快男子十傑投票」という読者投稿企画では、運動家部門で1位に選ばれています。
今でいうイチロー選手や大谷選手のような人気だったのではないでしょうか。
1911年(明治44年)、
スウェーデンのストックホルムで開かれる第5回国際オリンピック大会代表を決める「オリムピク大會予選競技会」というのが羽田運動場で開催されることを知った三島さんは、友達と観戦しに出かけました。
しかし、元々スポーツが大好きだった三島さんは、見ているだけでは我慢ができなくなり、思わず飛び入り参加してしまいます。
そして、その競技会で100m、400m、800mで一位、200mで二位を獲得してオリンピック選手に選ばれます。
ついついオリンピック選手になってしまった三島さんですが、当時はオリンピックというものが日本では知られておらず、本人も、
「『かけっこ』をやりに外国に行くのは価値があることだろうか?」
と悩んだり、周りからも、
「日本のエリートが海外のスポーツショーに見世物として行くなんて」
との無理解に苦しめられたりしたそうです。
それでも、友達や帝大総長の励ましもあり、オリンピック出場を決心します。
日本人にとっての初めてのオリンピック出場は、華やかなものというよいりは、過酷な物でした。
その頃、日本からストックホルムに行くには、まず、ウラジオストックに渡り、シベリア鉄道に乗るという半月以上もかかる長旅でした。
その間は不自由な生活が続き、もちろん練習もできませんでした。
そうやって、ようやくたどり着いたストックホルム。
短距離の三島弥彦さんが国旗、金栗四三さんはプラカードを持って入場。
そこで、三島さんは、日本と世界の壁を知ります。
最初の100m予選でいきなりトップに1秒以上の差をつけられ敗退。
200m予選は最下位。
400m予選は棄権が相次いだこともあり、準決勝進出をしますが、右足の痛みのため棄権。
オリンピックを振り返って三島さんは言いました。
「お恥ずかしい次第で、とても勝負にはなりませんでした…スタートはうまくいったが、中途以後からきれいに抜かれてしまいました」
「日本人が勝利を得るには、先ずどんな贔屓目ひいきめで見ても短距離では敵しません。さればと云いふて力や體格たいかくを要するものも覚束おぼつかない…」
また、敗因について、
「走力の及ばざる点にあるが、走力を一層鈍らせたものは『孤獨(こどく)の淋しさ』と云いふものでした」
初めての海外遠征、見るもの聞くものすべてが初体験の環境で、「孤独」が一番の敵だったようです。
その時の使用したスパイクが残っています。
それが、こちら!!
ユニフォームがこちらです。
世界の、オリンピックの厳しさを、嫌というほど味あわされた三島さんでしたが、打ちのめされてばかりではいませんでした。
同じく苦杯をなめた金栗さんとともに4年後のベルリン大会での雪辱を誓い、閉会式を待たずに出国、次大会開催国であるドイツに向いオリンピック会場などの視察をしてから帰国しました。
しかし、そのベルリン大会は第一次世界大戦の影響で中止になってしまいました。
その後、三島さんはオリンピックに出ることはありませんでした。
「世界は広い」
「スポーツは楽しい」
大学卒業後、スポーツの世界を離れ、銀行家として過ごした三島弥彦さんは、家族にたびたびそう語っていたそうです。
今の日本のオリンピックの躍進の礎には、金栗さんと三島さんのような先人たちの苦労があったことを忘れないでほしいものですね。
2019年大河ドラマでは、きっと三島弥彦さんも登場することでしょう。
どんな役者さんがどのように三島弥彦さんを演じるのかとても楽しみです。