コカインを摂取したとして、麻薬取締法違反の罪に問われたミュージシャンで俳優のピエール瀧(本名・瀧正則)被告の判決公判が東京地裁で開かれました。
小野裕信裁判官は懲役1年6月、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)を言い渡しました。
その判決言い渡し後に小野裁判官は、5分以上にわたる説諭を行いましたが、その言葉が話題になっています。
小野裁判官は判決言い渡し後、
「有名人だからといってことさら刑を重くしたり手心を加えたことはありません」と言い「ただ言っておきたいと思ったことがあります」と続けました。
小野裁判官は証写真の中にあった「人生」と書かれた張り紙について、
「なぜこの書が飾られているのか、気になっていましたが、あなたのインディーズ時代からの活動でたびたび作品に出てくることばだと分かりました。あなたが大切にしている『人生』ということばについて、3つ問いたいと思います。」
『人生』をこれからどうしたいのか。『人生』の意味とは何なのか。『人生』ということばを贈ってくれた人の気持ちに応えているのかということです」
「あなたが芸能界に復帰できるのか、復帰できても何年先になるのかは分かりません。でもいつか薬物のドーピングがなくても、芝居がいいとか、これまでより活躍していると、社会の人から見てもらえる日がくることを切に願っています」
「謝罪やカウンセリングの中で迷ったり悩んだり孤独になることがあるんじゃないかと思います。そのときは『人生』と書いた人の気持ちに答えられているかを、胸に手を当てて考えてほしい。それがあなたがいるべき場所を見失わない上での大切なことじゃないでしょうか」
「電気グルーヴ」のインディーズ時代のバンド名は「人生(ZIN-SAY!)」。
電気グルーヴの相棒として長年、音楽活動を続けてきた石野卓球氏は、今回の裁判官の説諭についてこうツイートしています。
人生ってバンド名考えたの俺だかんな。よって、偉いのは俺、裁判官、瀧元死刑囚の順な。
— Takkyu Ishino/石野卓球 (@TakkyuIshino) June 18, 2019
また瀧被告が逮捕された後の3月24日、石野氏はツイッターで
「“Zin-sayは電気グルーヴ、電気グルーヴは人生”」と綴っています。
そして、瀧被告の年内ステージ復帰については「絶対無い!って何度も言ってんのに」と改めて否定しています。
また今回5分に渡る説諭を行なった小野裕信裁判官は、これまでの裁判でも、しばしば説諭が報じられることがあり「人情派裁判官」とも言われています。
例えば、09年には水戸地裁で、寝たきりの84歳妻に頼まれ、妻を絞殺した89歳の男性被告に懲役3年執行猶予5年の“温情判決”をくだした時には「仏壇の前でひ孫を持ち上げ、温かさや重さを奥さんに報告して弔って欲しい。寒いが体に気をつけて」と気遣いました。
一方10年、「赤報隊事件を忘れたか」と書いた脅迫文を朝日新聞記者に送りつけた56歳被告には「話し合って結論を出すのがこの社会のいいところ。被告の行動は到底許されない」と断罪。建築士や整復師などの被告に「プロ意識を持つ」よう説諭する場面も多いようです。
小野裁判官は、第55期(01年度)の司法修習後、大津地裁判事などを経て17年から東京地裁刑事第15部判事を務めています。